金、金、金!!!
必要以上に欲しいとも思ってしまうのが『お金』であり、手っ取り早くお金儲けしたい、という邪な気持ちが捨てきれない。で、僕は毎年毎年たくさん「お金」を払って、似たような内容の「お金」に関する本を読んできては、
「はぁ~、時間とお金 返してほしい…」
と落胆してた次第。
似たような人も多いと思う。新作マネー本は次々と出てくるし、図書館では入荷したマネー本はすぐに予約待ちになる。前に並んでたヨボヨボおばあちゃんが「○○流 お金の増やし方」を手に抱えてたのを見たときには虚しくなった。まだ金なのか…?と。一生お金について悩むんだろうか…?と、不安になっちゃう。
そんな出口の見えない「お金」への悩み・執着を振り払ってくれたのが今回紹介する「お金の賢い減らし方」だ。減らすお金もないド貧乏な僕が読んでみても「なるほど…」と参考にできるところのオンパレードだったし、70歳を超えた著者だから出る説得力や包容力みたいな雰囲気があり、読了後には活力と勇気を感じられるような名作だった。「お金」に関する本で、こんな気持ちになったのは初めて…!
というワケで、今回は「お金の賢い減らし方」について。記事本文では随所にネタバレや本文の引用もあるので、気になる方はここらでブラウザバックしてね。
「お金の賢い減らし方」
心に残ったポイント
世の中には「お金の増やし方」の本が溢れている。
経済コラムニストである著者への執筆依頼も、資産の運用や管理に関するものがほとんどだ。お金はもちろん大事、清貧の思想などと言うつもりはない。だが、昨今のお金に対する異常な関心の高さを見ていると、「お金に支配されている」人が多いように思えてならない。しかし、「お金は支配してこそ役に立つ」、決して振り回されてはならないのだ。ではいったい、どうすればよいのか。
本書では、お金を増やすことばかりに偏った世間の風潮に対し、誤った認識、過剰な不安を払拭するとともに、お金の本質を深く掘り下げ、人生を豊かに生きるための具体的な「お金の使い方」の考えを提示。死ぬ時に一番お金を持っているといわれる日本人のお金観に一石を投じる。
心に残ってるのは以下の3点。
お金の本質が見えてくる
- 第1章 ホンネ、タテマエ、そして勘違い
──日本人のお金観と歪んだ認識を考える - 第2章 お金について少しだけ深く考えてみよう
──お金の歴史とお金の持つ役割 - 第3章 “お金を増やしたい”という呪縛
──お金の増やし方の決定的な間違い - 第4章 お金の使い方、減らし方
──お金を使って豊かになる - 第5章 お金よりも大切なもの
──お金に人生を支配されないために
という構成になっている「お金の賢い減らし方」。
第1章では、人々が持っている「お金」に対する少し歪んだ感覚について、第2章では、「お金の本質」について、第3章では、誰もが何故 お金を増やしたいと考えるのか?について、そして後半ではお金に呪縛から解かれ、
楽しく無駄なくお金を使うことなんてできるの?
人生においてお金より大切なものがあるとすれば、それはいったい何なの?
単なる負け惜しみじゃなくって、本当に“お金より大切なもの”にはどんな価値があるの?
についても学んでいける構成になっていた。40年以上 お金に接してきた筆者の慧眼によって丁寧に解説される「お金の本質」に触れることによって、気持ち良いくらいにお金に関する凝り固まった考えが解きほぐされていく感じがした。
シンプルな投資
世の中において企業が行うありとあらゆる事業活動は、
①資本を投下し
②そこから収益が生まれ
③投下した資本のコストを払い
④利潤が生まれるという流れで続いていきます。
(中略)
このようにして事業活動は増殖していくことになり、逆に利潤を生まず縮小してしまうような事業活動が続くと、その企業は終わってしまいます。これが企業倒産ですね。
結果として、生き残った事業活動(企業)は増殖を続けることになります。
資本主義が本質的には自己増殖するシステムであり、市場は長期的には成長を続けていくという理由が、ここにあるのです。したがって、利益を求める人類の経済活動が続く限り、投資を続けていけば報われることになるといってよいでしょう。
お金の増やし方は至ってシンプルなことも理解できる内容も挟まれていた。なかでも「おっ!」と思ったのが、上のような"資本主義は自己増殖するシステム"、という言葉。
お金の増やし方は地味であり、ノウハウと呼べるようなモノでもないことが本文では解説されており、実際に著者が10年以上行っている投資の仕方にも書いてあったので参考になった。「誰でもできる」ということと、「誰でもやっている」ということは違うそうで、だからこそお金に困る人、何も不自由しない人に分かれるのかなぁ…、とも思った。
分かっていても なかなかできない人が多いというのも、また事実なんだってさ。
お金で得られる、お金より大事なもの
判断をするのには材料が必要です。
この場合の材料というのは、単に条件のことを言っているのではありません。「こういう条件の場合にこんな判断をしたら、どういう結果をもたらすか?」というのが判断のもとになる材料なのです。判断した結果がどうなるかという推測は、自分が経験してきたことからしか得ることはできません。
本を読むことで知識を得ることはできますが、判断力は経験でしか得られないと思います。
つまり「体験する」ということは、自分にとって最良の果実をもたらしてくれる「判断力」を手に入れるための投資と言い換えられる。そして多くの体験を積めば積むほど、優れた判断力を手に入れることができるわけだから、「経験する」ということは立派な投資とも言えるとのこと。
金銭ではない自分自身の豊かさにつながるのが「体験」という投資であり、ただひたすらにお金を貯め込むよりも、”いま”しか体験できないことに、おおいにお金と時間を使っても良いのではないかとも考えさせられた。
お金を減らすことで「経験」という貴重なものが手に入ったり、人のために使うことでお金を減らしたりすることによって、大切な「満足」を手に入れることができるとも分かったのは大きな収穫だった。
「お金の賢い減らし方」
印象的だった文章
「お金の賢い減らし方」を読んでみて納得させられた部分、一節を備忘録として抜き出しておく。多くなり過ぎたので数を減らしたが、少しでも気になるフレーズがあれば是非、本編を読んでね。
節約・裏技本が世の中にあふれている
これらの類いの本(派手なマネー本)が売れる理由は、シンプルで具体的だからです。実際にはそんな節約や裏技は、お金に関する本質的なことではないのですが、いかにも「こういうことをすればお金は貯まる」といった雰囲気を醸し出しており、具体的な行動が可視化されているため、やはり多くの読者を引きつけるのです。
「ズボラでも貯まる」とか「簡単な習慣で無駄遣いをなくす」というフレーズは、多くの人の気持ちに強く訴えかけてきます。これも、人間の心理として「面倒なことが嫌い」という人が多いからです。
自分が損をしてでも相手に儲けさせたくない
この中で中野さんは、「日本人は他国より顕著に『スパイト行動』をしてしまう傾向がある」と述べています。スパイト行動というのは''意地悪をすること''という意味です。もっと突っ込んでいえば『自分が損をしてでも相手に儲けがいかないように嫌がらせをする』」という意味だそうです。
たとえば2020年に支給された特別定額給付金については、当初、コロナ禍で収入が大きく減少した世帯に対する救済策として30万円が支給される予定でした。
ところが、それに対して異論が続出し、結局すべての世帯に一律10万円となりました。不思議なことに人間の脳というのは、自分ではない誰かが30万円得したら、自分が30万円損をしたと思ってしまう傾向があるといわれています。
誰かが得をしたら、自分は損する
と考える脳のバイアスを「ゼロサムヒューリスティック」ともいうよ。
お金を貯めるのは超シンプル
お金を貯める場合に一番大切なのは、「"貯める"という行為を、"使う"よりも先に行うこと」です。稼いだお金をまず使って、残った分を貯めようということはではまず不可能です。それではおそらく、永遠にお金は貯まらないでしょう。
(中略)
前述の「となりの億り人」でも、女性で投資もほとんどせず、給与天引きだけで40代半ばで億り人になったという事例が出てきます。彼女が言ったことでとても印象に残っているのは、
「お金はあとから貯められない」
ということです。
増やすのも、やり方次第ではシンプル
「これをすれば絶対に増える」という方法はありません。投資というのは常に先が見えない不確実なものであり、だからこそ増える可能性を秘めているのです。
別の言い方をすれば、「不確実=リスク」ですから、投資には常にリスクがつきまとい、そのリスクこそが利益の源泉になるということなのです。
最初の話に戻りますと、「お金を増やすこと」はそれほど難しいことではないのです。普通に働いて、計画的にお金を貯めて、できる範囲内でシンプルに投資を続けていく、という単純なことをしていれば、自然にお金は増えます。
一番大きな問題は、このシンプルなことを頭で理解するのは簡単で誰でもできますが、実行するのが難しいということです。でも、本当に「お金を増やしたい」と思っているのであれば、その最も簡単な方法は、ここで述べた1から3までの流れをルーティン化し、続けることでしょう。
1~3までの流れは本文で。
アリとキリギリス
この寓話の教訓は、人生には、働くべきときと遊ぶべきときがある、というものだ。もっともな話だ。だが、ここで疑問は生じないだろうか?アリはいつ(傍点)遊ぶことができるのだろう?それが、この本のテーマだ。
私たちは、キリギリスの末路を知っている。
そう、飢え死にだ。
しかし、アリはどうなったのか?
短い人生を奴隷のように働いて過ごし、そのまま死んでいくのだろうか?
いつ、楽しいときを過ごすのか?
厳密には「お金の賢い減らし方」ではなく、以下の本からの引用。
「お金がない」??
なぜ多くの人は、「お金がない」と言って、やりたいことや欲しいものを手に入れようとしないのでしょう。
この理由は2つあると思っています。
まず1つは、「本当はそれほど欲しくない」からです。生活のレベルは人それぞれですから、欲しいものを手に入れるために普通に生活をしながら貯金をするという人もいますが、中には生活費だけで手いっぱいなので貯金する余裕がないという人もいるでしょう。
そんな場合、どうしても欲しければ、本業以外に何か別の収入の道を考えるとか、あるいは生活レベルを落としたり、極端な場合は一食抜いてでもその分のお金を回したりということをしてもよいはずです。
でもそれをしないということは、そのことやモノにそれほど大きな価値を見出していないからでしょう。だとすれば、それに対してはあまり無理をする必要はありません。
2つ目の理由については本文で。
たしかに…、と納得のいく理由があったよ。
年収300万円の人と年収1000万円の人
年収300万円の人と年収1000万円の人を比べたら、誰もが1000万円の人の方が豊かだと思うでしょう。
でも、もし1000万円の収入を得るためにかけるコスト、たとえば毎日の長い通勤、高収入にふさわしい見栄えのよい洋服の購入、地位を維持するために地方での単身生活をいとわないこと、そして長時間労働といった隠れたコストを考えると、年収1000万円の人の方が本当に豊かなのかどうかは何ともいえません。
なぜなら、年収1000万円の人は、ライフエネルギーを無駄に使って、それを「お金」という紙切れに変えているだけともいえるからです。
コスパ至上主義
どうも現代の多くの人は、日常生活において、そして人生においてすら、無駄をなくして効率的に生きようとしているように思えてなりません。でも、もう少し 鷹揚に考えて、お金を使うこともしてみるべきなのではないでしょうか。お金の使い方に関して、誰もが無駄をなくして効率を求めた結果、なんでもかんでも「コスパのよいモノ」を求める時代になるつつあるように思えます。
私はこの「コスパのよさを求める」ということが、日本人をますます貧乏にしていってるような気がしてなりません。
「よいものを安く」
「コスパのよいサービス」
を求めれば求めるほど、それは「消費者としての自分」が「生産者・サービス提供者としての自分」の首を絞めることになてしまっている。
詳しくは本文で。
人生で、一番大切なもの
私も70歳を超えましたので、あとどれくらい生きられるのかわかりませんが、人生の終盤が近づくにつれて、人生で最後に残る大切なものは何だろう、と考えるようになりました。
そして前述の本を読んでみて、一番大切なのは「思い出」ではないだろうか、と自分なりに考えています。人生の充実度を高めるのは、その時々の体験であり、それにまつわる思い出ではないか、と。
総括:「お金の賢い減らし方」
読書レビュー
お金以外の人生の充実感
について、とても考えさせられた「お金の賢い減らし方」だった。
本書は、ある程度お金に余裕のある方に向けて書かれた本なのかもしれないけど、現在 人生の迷走期にいるアラサーの僕が読んでも胸に響くものがあり、お金の使い方や稼ぎ方、貯め方や使い方については一考させられるような構成になっていた。
もちろん、お金は大事だ。
何をするにしてもお金は必要だ。
でも、やっぱり何事もバランス感覚が重要だ。ただひたすらお金を稼いだり・増やすことよりも、それをいかに使って減らしていくかを考えることも人生の充実には必要不可欠なんだと思った。
気になった方は是非。