【無意識な偏見&思い込み?】『バイアスの心理学』の書評・名文まとめ

認知バイアスについて

東大の先生が分かりやす~く教えてくれるのが「バイアスの心理学」。''文系のための''という枕については最後まで読んでも良く分からなかったが(文系理系って関係なくね…?)、とにかく認知バイアス初心者、心理学については微塵も知らない僕でも興味深い内容でいっぱいだった。

 

認知バイアスって何?

考え方のクセのことらしい。

僕達は日々、色々なことを処理する。いちいち考えて対応してたら大変なことになる。そこで脳は、ある程度のレベルで正解に近い解をスピーディに出せるように進歩を遂げた。これまでの経験や先入観を用いて、直感的に考えても大きく外れないようになった。

 

すばやく効率的に物事を判断するためには必要だが、ときには通常では考えられない誤った判断を下してしまうヒューリスティックであり、認知バイアス。知っておくことで自分を客観視できたり、物事を合理的に考えられるようになったりするぞ。

 

 

というワケで、今回は「バイアスの心理学」という本について。あ、記事本文では随所にネタバレや本文の引用もあるので、気になる方はここらでブラウザバックしてね。

 

 

 

 

「バイアスの心理学」
面白かったポイント

最近「認知バイアス」という言葉が注目を集めています。認知バイアスとは,私たちの誰もがもつ「思考の偏り」や,「考え方のクセ」のことです。私たちの毎日の行動は,無意識のうちに認知バイアスの影響を受けています。
たとえば,限定品と書かれると,それまで欲しくなかった商品もつい買いたくなってしまいませんか? これは「希少性バイアス」という認知バイアスの一種です。また,災害で危険がせまっているのに「まだ大丈夫」と思いこんでしまうのも,「正常性バイアス」というものです。私たちは,さまざまな心のクセによって,合理的でない判断や行動をしているのです。
本書では,さまざまな認知バイアスについて,生徒と先生の対話を通してやさしく解説します。認知バイアスについて知れば,思いこみや偏見のない判断ができ,日々の生活や人間関係の役に立つにちがいありません! 認知バイアスの世界をお楽しみください!

 

引用:紀伊国屋書店「バイアスの心理学」

 

 

 

脳にかかる負担を軽くする思考回路

  • 1時間目 誰の心にもひそむ考え方のクセ
  • 2時間目 思わぬ危機をまねく思いこみや先入観
  • 3時間目 知っておきたい判断と行動のバイアス
  • 4時間目 無意識が影響する集団と人間関係
  • 5時間目 数字にまつわる思いこみや勘ちがい

からなる本作。

 

認知バイアスを生み出すとされる「ヒューリスティック」について、終始よく解説されていて分かりやすかった。

ヒューリスティックって何?

知識が不足している状態でも、あまり深く考えずに正答に近い回答に導く思考回路のこと。無意識にも働く考え方のことで、普通に生きていく上ではプラスに働くことが多いそうだ。しかし、

「かわいそうな弱者」と「かわいそうではない弱者」が社会の少ないリソースを奪い合う。なぜこのような「ゼロサムゲーム」として描かれるのか。その理由の一つは「ゼロサム・ヒューリスティック」という認知バイアスである。僕たちの脳は、

誰かが得をすると誰かが損をするとみなす傾向

がある。女性の支援を訴えるフェミニズムが、何か損をした気持ちになった男性から反発を受ける理由である。

引用:逆張りの研究

という風に、非合理的で、誤った判断をする原因にもなるヒューリスティックであり…。

 

 

セレクティブ・アテンション

上の動画で、白いユニフォームのチームが何回 パスを通したか数えてみましょう。ここで下にスクロールしてしまうと実験の意味がないので、しっかりとカウントしてからスクロールしてね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数えた?

 

 

 

 

正解は15。

 

もうひとつ質問があるんだけど、

ゴリラの登場にも気付いた?

 

 

本書だと約半数の参加者はゴリラが登場したことに気付かなかったという統計があるらしいんだけど、筆者の知人(休日はYoutubeのリール動画で半日が消えるタイプの人達)はほぼ全員 ゴリラの存在に気が付いてた。スマホとかがある現在では注意は散漫になっているのかもしれないね。

 

 

各種『バイアス』について

 

仮説を補強するだけの情報を集めるバイアス

A型の人は几帳面とかB型の人はマイペースとかO型はおおざっぱとか、科学的に根拠は一切ないのに多くの人が信じているのには理由がある。

A型だから几帳面なはず!

と、そもそも決まっている仮説「A型は几帳面」に当てはまる行動ばかりに注目し、A型っぽくない行動にはあまり注目しないどころか無視する傾向を「確証バイアス」というそうだ。

 

人は自分の仮説の反証となる情報よりも、仮説の裏付けとなる情報を確認してしまう。「2-4-6課題」という面白い問題もあったので、是非 解いてみてほしい。ほとんどの人は検証不足になると思う(もちろん僕は検証不足でした…)。

 

成功者の事例だけを重要視しちゃうバイアス

 

どうせ聞くなら成功者の声を聞きたい

と思う。当然、真似ることができるなら成功者を選びたい。失敗者よりも成功者の体験談の方が価値・信頼度があるようにも思える。

 

しかし、成功から学ぶだけでは落とし穴があると分かるのが「生存者バイアス」である。詳しくは本文、もしくはマイホームアフロ田中を参考にしてほしいんだけど、成功者の声のみが語り継がれるということに留意して、失敗した人の事例も同じくらい重要な判断材料として扱いたいところ。

 

 

 

 

生存者だけの事例では分からないコトも多いんだね。

 

 

悪い状況なのに変えたくない

差し迫った危機があるのに、変えたくない

これくらいなら問題ない…

と、リスクを過小評価してしまう傾向のことを「正常性バイアス」というそうだ。

 

単語はちょっと複雑そうだけど、これは原理としては結構 想像しやすかった。端的に言ってしまえば、危機が迫った時、人は不安になるのは勿論、とんでもないストレスに襲われる。そんなときに適切な対応(行動)を起こすのではなく、

慌てて行動するほうが危険なんだ…
まだ大丈夫だ…

と盲信することで、心の平穏を保とうとする。超良く分かる。問題に対応するのよりも、逃げる方が楽だものね…。

 

 

 

「バイアスの心理学」
印象的だった文章

「バイアスの心理学」を読んでみて納得させられた部分、一節を備忘録として抜き出しておく。多くなり過ぎたので数を減らしたが、少しでも気になるフレーズがあれば是非、本編を読んでね。

 

 

現状維持バイアス

人は、新しく挑戦することが合理的な状況であっても、失敗を恐れて現状維持を選択する傾向がある。

 

わら人形論法

相手の主張をゆがめて解釈して架空の主張をつくりだし、その架空の主張に対して攻撃すること。

 

同調圧力

先ほど説明した通り、同調バイアスは、判断の際に他者の意見を参考にするという情報的影響と、集団の秩序や規律を守ったりするためという規範的影響によって生じると考えられています。

 

 

高齢者による事故は増えている?

あなたが高齢運転者による事故が増えていると感じるのは、過去におきた悲惨な高齢運転者事故の報道が強く印象に残っていたためかもしれません。そのあとで類似の事故のニュースを何度か目にするたび、「最近は高齢者の運転による事故が多い」というように、実際以上にそのような事故がおきていると錯覚している可能性があるのです。

このように、思い出しやすさや利用しやすさを手がかりにして、おきる頻度などを判断することを利用可能性ヒューリスティックといいます。

実際には高齢者による運転事故は減少傾向にあるそう(参考)なのに、僕らが「最近多いなぁ…高齢者には返納させた方がいいだろ絶対…」と思いがちなのは、上にもある「利用可能性ヒューリスティック」という認知バイアスがあるからかもしれない。

 

 

 

総括:「バイアスの心理学」
読書レビュー

情報過多な現在だからこそ

、忙しい人にも一読してみてほしい「バイアスの心理学」だと思った。先述した「利用可能性ヒューリスティック」のような、日常的に影響を受けていて、

あぁ、あるある……

と納得させられる心のクセが多く、超勉強になった。気が付けば読んだ直後から考え方を変えられる即効性もある。意識していなくても考えに紛れ込んでしまうから思い込みであり、先入観なんだろう。

 

無意識のうちに働いてくれてる考え方のクセ・認知バイアスについて知ることで、感情的に流されることなく落ち着いて、合理的な選択や判断ができるようになると思う。

 

テレビやネットで絶え間なく情報が流れてくる現代だからこそ、是非「バイアスの心理学」を読んでみても良いのではないでしょうか。

 

 

それでは!

 

 

 

 

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