傷だらけの俺たちに明日はあるか
というサブタイトルだったので、
うーわ…
読むとゲンナリするやつね。
ネガティブな本はちょっと……
と思う人もいるかもしれんが、どっちかといえば逆で、ポジティブな読了感の「副業おじさん」だった。
「副業」について、本業だけでは生活が苦しいから時間と体力を切り詰めて副業で稼ぐ、的なネガティブなイメージをお持ちの方は是非 読んでみてほしい。お金も大事だけど、人生を楽しむための手段としても「副業」が役立つことが知れる本書だ。
というワケで、今回は「副業おじさん」という作品について、読了後のレビュー・感想をまとめていきます。あ、記事本文では随所にネタバレや本文の引用もあるので、気になる方はここらでブラウザバックしてね。
「副業おじさん」
概要・おすすめポイント
崖っぷち日本、さまよう中高年男性のデス・ロードを描く
「JBpress」で話題沸騰!注目の労働ジャーナリスト、初の著書最近、意外な場所で働くおじさんをよく見かける。その中には、ホワイトカラーと思しき中高年も少なくない。背景には、日本型雇用崩壊、ジョブ型雇用拡大、実質賃金低下、教育費の高騰等がある。中高年男性の経済・労働環境が厳しくなり、セカンドジョブで稼がざるを得ない「副業おじさん」が増えているのだ。
本書は「JBpress」で連載されていた若月澪子さんの人気連載『おじさんの副業』などの集約版だ。
- 「副業の森」をさまよう人材派遣おじさんの夢はまさかのユーチューバー
- 在宅副業の夢も崩壊、倉庫バイトを続けるバブル世代の終わらない自分探し
- 筆者も体験!マイナス20度の冷凍倉庫で11年間副業を続ける50歳の切実な理由
- 「普通の人」にまで広がりつつある空き缶拾い、月10万円を稼ぐ63歳の言い分
- 学習塾はイケメンしか採用されない、航空会社イケオジがハマる週末バイト
などなど、スマホでさくっと読める記事もあるので、まずはお試しで読んでみても良いと思う。
個人的な「副業おじさん」を読んだ感想・レビュー・心に残ったポイントは以下のような感じ。
え、こんな年収高いのに…?
驚いたのが、副業をするおじさんの年収。
本業だけじゃやってけないから副業するんでしょ?
と思っていたんだけど、年収1000万円以上もらってるような上流「ホワイトカラー」おじさんでも副業しててビックリした。どうやら教育費やら老後資金やらで大金が必要らしい。子供を私立の高校にいれたりすると年間の学費だけで200万とかするところもあるらしい。県立高校を卒業した僕としては、たいへん驚いた。
年収が1000万円から800万円に落ちて危機感を覚えて副業を始めるオジサンもいた。でも800万円って、普通に高収入だしなぁ…。危機感を覚えるのは結構だけど、さすがに不安に対して敏感すぎるんじゃないの…?とも思った。
陥りやすい5ステップ
正社員として長時間労働してきた人が、いきなり「多様な働き方」に挑戦しても厳しい現実がある。本書ではそれを、以下の5ステップにしてまとめられていた。
- 夢見がち期
「経験や知識を活かした副業をやりたい」と考えるも、何から手をつけたらいいのかわからず、ネットをさまよう - とりあえず期
小遣い稼ぎになりそうなアンケートモニターやポイ活(ポイントを貯める活動)にとりあえず取り組む - クリエイティブ期
ブログや動画の投稿をしてみるが、フォロワーが増えず更新が滞る。もしくは、ウェブライターなどの副業に応募するも「研修費」と称してお金を要求される上に、報酬の安さに絶望する - 開き直り期
結局、手っ取り早く現金が手に入る、時給1000円前後の肉体労働のバイトにいそしむ。もしくは「人の役に立ちたい」と福祉、教育系のバイトに携わるも、賃金の安さに挫折する。 - 絶望とあきらめ期
バイトの労働条件の悪さに辟易し、好条件を求めてバイトを転々とする。もしくは、振出(1)に戻る。
中年男性は副業の「正解」を求めて、1~5の間を行き来するようだ。まぁ中年男性に限らず、僕の知人の20代男性も同じような感じだけど。。
おじさんの『副業』のリアル
著者の徹底したインタビューによって
- 週末のウーバー副業でいくら稼げる?
- せどり(転売)でいくら稼げる?
- おじさんの欲望を上手く利用した「暗号資産×国際ロマンス詐欺」
などなど具体的な体験談や失敗談がまとめられているので、これから副業を探す人にとっても役立つ一冊になっていたと思う。希望が高ければ高いほど落下したときに受け身を取れずに挫折しやすいので、現実的な失敗談を知っておくだけでも副業は続けやすくなるぞ。
失敗談が目についたけど、もちろん副業することによって視野が広くなったり価値観が変わった人もいたのも印象的だった。やっぱり、どうしたって失敗はつきものだけど、経験を重ねることでチャレンジへの耐性がつく。主体的に情報を集めたり、資金管理を行ったり、必要な技能を取得することで得られる経験値は老若男女問わず、とっても価値のあるものだ。
トライ&エラーを繰り返せる場として「副業」にチャレンジするおじさんを逞しく、心強く思えた。
「副業おじさん」
印象的だった文章
「副業おじさん」を読んでみて納得させられた部分、一節を備忘録として抜き出しておく。多くなり過ぎたので数を減らしたが、少しでも気になるフレーズがあれば是非、本編を読んでね。
「副業」という考えは捨てよ
在宅副業で月5万円以上稼ぎたいなら、『副業』という考えは捨てた方がいいです。『もう一つの本業』という気持ちでやらないと、収入にはつながりません
引用:第1章「副業の森」をさまよう
狙われる「孤独という病」
一体、私たちは、誰と、何を分かち合いたいのだろう。ともすれば人の顔を見るより、スマホやパソコンを見ている時間の方が長い私たちは。オンラインの向こう側にいる知らない誰かの方が、おじさんの孤独をよくわかっているのは皮肉だ。
引用:第3章 若者に交じって
何より大切な「学び」
「ホワイトカラーの父親が、夜の冷凍倉庫で働く姿はカッコ悪くて離せない。妻は知っていますが、子どもたちは残業で帰りが遅くなったと思っているでしょう」
この国の父親は、周囲に苦労を見せないのが美学だと思っている。でもね、そこは子どもたちにお父さんの苦労を伝えましょうよ。それも彼らには何より大切な「学び」です。
引用:第5章 部活のノリ?
矛盾した二つの願望の両立
「わずらわしい人間関係を避けたい」
「ありがとうと言われたい」
この矛盾した二つの願望をどうにか両立させようと、おじさんたちはもがいている。たとえばある50代男性は、退職後の理想をこんなふうに話していた。
『小学生の通学路で、交通整理をしている高齢者のボランティアがいますよね。あんな老後だったらいいなと。組織で上手に立ち回る人間関係にはもう疲れた。でも、まったく人と触れ合わないのも寂しい。交通整理のように、広く浅く「おはよう」「ありがとう」と言われる世界を持てるのが幸せだと思う。』
引用:第6章 セカンドステージ
『ホワイトカラー』について
私たちの社会は「ホワイトカラー信仰」にとらわれ過ぎていると感じる。オフィスワーカーたちは、いわゆる「エッセンシャルワーク」と呼ばれるケア労働…介護、教育、保育、医療、精巣、ドライバー、接客などに対し、「大変そうだが他人事」「尊敬はするけれど、自分には無理」という見解が強い。ちかし、本当にそうなのだろうか。
エッセンシャルワークは、体を動かし、人と協力し、汗をかき、そして人から直接「お疲れさま」「ありがとう」と言われる。パソコンをのぞき込んでいる毎日より、人間らしく、気持ちがいい。分業が行き過ぎた世界で、ホワイトカラーは自らを狭い檻に閉じ込めているのではないか。
引用:エピローグ
総括:「副業おじさん」
読書レビュー
生活や将来への不安解消
のためだけに「副業」があるわけではないと知れたのは大きな学びだった。
もちろん、金銭的な不安から「副業」を選ぶ人の方が多いけど、それだけではなくて、
- 未知との遭遇でワクワク
- 視野・価値観を拡げる手段
として副業が役に立つことは全サラリーマンが知っておくべきだと思う。自分にはここだけしかない!と思い込むことによって追い詰められる。逃げ道がなくなる。選択肢がないと不安になってしまう。
今後、「副業」はすべての人にとって新しい居場所になるかもしれない。
心の拠り所なんて、なんぼあってもいいですからね。
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