脳の限界・偏りを学べる【『バイアス社会』を生き伸びる】の書評・名文まとめ

複雑化する社会

になればなるほど、基準がどこにあるのか分かりにくくなる。で「分かりやすい物事」を好むようになる。人間の臓器の中でももっとも酸素の消費量が激しいとされており、リソースを大量に消費している脳。短時間で、それっぽい正解を導くため、あまり深く思考しないで、脳が消費するエネルギーを節約するために特化した「バイアス」という機能。

 

バイアスというのは偏りのことですが、どこから偏っているのかその基準が定められなければ、何がどう偏っているかということさえできないのです。

人間は誰しもバイアスから逃れることはできません

いわばバイアスというのは、人間が生きていく上で必要な脳の機能でもあります。

ただし、周りの人が持つ偏見や思い込みによって、あなた自身が生きづらいと感じていたり、人生の選択肢が減るなどの実害が出ているとしたら、それは解決する必要がある問題です

また他人だけじゃなく、自分自身が持つ思い込みに縛られて、身動きができなくなっている人もいるかもしれません。

 

 

というワケで、今回は「『バイアス社会』を生き延びる」について。記事本文では随所にネタバレや本文の引用もあるので、気になる方はここらでブラウザバックしてね。

 

 

 

 

「『バイアス社会』を生き延びる」
心に残ったポイント

ネットニュースでは「日本は世界に愛され尊敬され続ける最高の国」という気分のいい記事から、「少子高齢化が進み、競争力低下が止まらない日本はもう終わり」という、読めば不安が押し寄せるものまでさまざまだ。円安が進めば「円安が日本を滅ぼす」という絶望的な記事が並ぶ一方で、「円安はチャンスになる」という記事もまれに登場する。

一体どれが本当なのか。

あるいは、どれも本当ではないのか。

情報を処理するとき、人間の脳は論理的に正しいものより、わかりやすいものや都合のいいものを選んでしまう傾向がある。その結果、特定の人物や物事に対する偏見や間違った思い込み、ときには差別的な感情を強くしてしまうことがある。
そんな思考の偏りや思い込み=「バイアス」は世界に溢れていて、自分の脳で思考する限り、誰もが「自分バイアス」から逃れることができない。つまり、誰の意見であっても、どこからの情報であっても、何らかのバイアスがかかっていることを知った上で、物事と向き合うことが重要なのだ。
誰かのメガネをかけさせられたまま、つまり、誰かの思考バイアスに覆われたまま不自由な人生を送ることを避けて穏やかに生き延びる戦略を、脳科学の知見から語る。

 

引用:小学館「 『バイアス社会』を生き延びる」

 

 

心に残ってるのは以下の2点。

 

 

バイアスって、なんであるの?

そもそも「バイアスとは何か?」という疑問に対し、著者の中野信子さんは、

バイアスの存在理由を簡単に言ってしまえば、「人間の脳の限界」です。

(中略)

これ以上、脳を大きくできないならどうすればいいのかというと、現状の脳の大きさのままで、よりよい答えを出すための工夫をしなければならないのです。

その工夫の一つが、バイアスなのかもしれません。荒い計算でいいから、瞬時に大まかな答えを出すという工夫です。私たちの脳は、正確さより速度とエネルギー効率を重視した結果、バイアスというものが必要になったと考えられるのです。

とまとめられていたのが印象的だった。

一見 差別を助長したりするように感じる「バイアス」だけど、そんな邪悪なものでもなくて、「使い方」次第で選択肢や可能性を増やして生きやすくなるものであることも学べた。

 

大事なのはバイアスについて知っておくこと。自分と周囲の人の偏りを知ることでトラブルを回避したり、より幸せな心理状態を保てる秘訣なのかもしれないね。

 

 

情報の受け取り方について

ニュースも基本的には中立性を目指しているものの、より多くの人に読まれやすいのは悲観的で人々を不安にさせるようなセンセーショナルな記事だからです。記事をつくる際には、そうしたニュースの方が意識的、あるいは無意識的に選ばれやすいという''セレクションバイアス''が働きます。

「世の中が変わらなくて厳しい」

「世の中の変化が激しくて厳しい」

「為替レートが変動しなくて厳しい」

「為替レートが変動するから厳しい」

……メディアを見ていると、とにかく厳しいという声ばかりが聞こえてきますが、それはそうした論調の方が読まれやすいからです。

テレビや新聞は勿論、インターネットによって情報が過多になった現代において、いかに情報を取捨選択するかどのように心理バイアスがかかるかについて脳科学としての見解、そして実例を用いて丁寧に解説されていたのが超分かりやすかった。大人こそ読むべき。ヤフコメ民全員は全員読むべき。

 

小学館YouthBooksでしょ?
若者に向けた本だから、大人が読んでも学びが少ないのでは…?

いや、多忙な大人だからこそ表面的に分かりやすい情報に飛びつきやすいからな。実際 アラサーの僕が読んでも膝を叩いて納得するようなポイントが多かったぞ。

 

大人子供関係なく、現代を生きる人は絶対に一読しておいた方がいい。情報に踊らされているうちに、人生が終わっちゃうぞ。

 

 

 

 

 

「『バイアス社会』を生き延びる」
印象的だった文章

「『バイアス社会』を生き延びる」

を読んでみて納得させられた部分、心に残った一節を備忘録として抜き出しておく。多くなり過ぎたので数を減らしたが、少しでも気になるフレーズがあれば是非、本編を読んでね。

 

 

まずは立ち止まって、考える

私たち人間は誰しも、バイアスの影響でとても合理的とは思えない行動をとってしまうものです。

何かおかしいな、ちょっと違うのではないかと感じたら、相手を責めたり恨んだりするのではなく、まずは立ち止まって、相手と自分が持っているバイアスの可能性について考えてみる。そのうえで自分はこれからどんな戦略をとればいいのか、よりよい人生を選ぶ方向へ目を向ける。バイアスにまみれた「世間」を生きていくためには、こうした冷静な戦略が必要です。

 

 

情報の受け取り方

情報というのは基本的にはあった方がいいと思いますが、その「質」も問題です。やはり世の中にはきちんと吟味しなければならない情報もあって、たとえば「この壺を買ったら必ず大学に受かります」という情報を与えられたら、どうすればいいのでしょうか。

(中略)

情報の良し悪しを判断する仕組みとセットで、情報を受け取る必要があるということです。

 

 

疑うことは知能が健全な証拠

世の中には、一度決めたことを最後まで貫き通す、考えのぶれない人を賞賛するような風潮もありますが、考えることや迷うことはリスクを最小限にするための脳の重要な働きの一つとも言えます。

 

 

事実と意見を分けて考える

ですから、日本は円安や物価高でとても厳しい状況だという話を見聞きしたとき、まずはその情報を一回受け止めて、どこまでが事実か考えてみる必要があります。

「円安」「経済成長率が低い」「物価が上がった」まではファクト(事実)と言えます。しかし、その状態が「厳しい」というのは、発信する人の意見に過ぎません。

情報に接するときには、事実と意見を分けて考える必要があります。そうしないと無意識のうちに「日本はヤバい」というメガネをかけさせられてしまいます。

 

 

正解のない戦場

依然も触れたとおり、脳の社会性を司る領域の成長は遅く、他人に共感的に振る舞ったり、相手を一人の人間として尊重したり、他人の個性を認めたりすることができる脳の領域は、25歳から30歳くらいにならないと成熟しないと言われています。

そのため、10代の集まる学校では、自分の感情を抑制できずに他人を攻撃する人がいても不思議ではありません。

子供は学校に行くべき、というのも「学校バイアス」なのかもしれない。改めて、義務教育は大人が子供に一定の教育を受けさせるという義務であり、「学校に通うこと」事態を義務付けているわけではないことを認識させられた。

 

 

論破について

巷では、論破することが流行っているかもしれません。たしかにスッキリしますよね。けれどもこの(相手が年上だったり地位が上だったりする)場合はうかつに論破してしまったら大変です。相手が不快に思ったら騒動となり、致命的な損失になるかもしれません。

相手を言い負かすのは、長い目で見れば、避けた方がいいことが多い。だけど、こんなふうに言われっ放しも不愉快ですし、場合によってはナメられてさらに搾取されてしまうというリスクもなきにしもあらずですよね。

相手をうまくかわすか黙らせる方法については本文で解説されていた。

 

 

とても窮屈で、生きづらい社会

そもそも、人間が集まるところに争いや摩擦はつきもので、決してなくなることはありません。また、誰だって、どうしても好きになれない人はいるものです。

それなのに、今の日本の教育のように、ただ「皆仲良くしなさい」と教えるだけでは、みんなが自分の思いを押し殺して生きなければいけません。それはとても窮屈で、生きづらい社会です。

それよりも、人間の心理を知ったうえで、自分は相手とどういう関係を築きたいのか、そのためには、どんな駆け引きをすればいいのか、無用な争いを避けるためにはどうしたらいいのかを考える方が、ずっと有益ではないでしょうか。

 

 

世間を生き延びていくために大事な力

自分の選んだ答えが正解だったかどうかは、誰にも分かりません。

だからこそ、常に自分の気持ちとしっかり向き合って、その状況で自分がいいと思うものを選ぶべきだと思うのです。

自分の気持ちと常に丁寧に向き合って、決断する力。

間違えたと思ったら、いったん立ち止まって、よりよい選択をし直す力。

自分や他人の失敗から学ぶ力。

こうしたことが、世間を生き延びていくために大事な力になっていくはずです。

 

 

このほか、第5章の締め(183ページ)の4文が超良かったけど、流石にネタバレが過ぎるので割愛。超紹介したいけど、気になったら是非、本編を読み進めてみてね。

 

 

 

総括:「『バイアス社会』を生き延びる」
読書レビュー

事実に基づきながらも温かさを感じる

ような本「『バイアス社会』を生き延びる」だった気がする。色々な心理・バイアスについて脳科学の知見から語られているので学べる。そこまでは普通の有益な本なんだけど、発達段階の子供達をはじめ、僕のような無知無学な人のためにも

  • 自分で考えて、穏やかに生き延びるための戦略

についても結構 詳しく解説されているので、背中を押されているようにも感じられた。ヤングな層に向けて書かれているので小難しい話もなくて読みやすく、大人でも活力を貰えるような良本だった。

 

 

何かを「疑う」ことは「信じる」ことよりも疲れる。

それでも周りの意見に疲れちゃったり、生きていて辛いように感じることがあるのなら、客観的になるためにも脳の思考フィルターである「バイアス」について学ぶべきかもしれない。

 

 

気になった方は是非。

 

 

 

 

 

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