【知能と同じくらい大事な能力?】10代の脳とうまくつきあう【感想・書評】

悩みの本質は考え方

だと思う。で、最近 中坊のようなことで悩むことが多い。こんにちは、29歳です。本来の自分以上に見せるために無理をしたり、嘘をついたり、不安になったり、かと思えば過剰に自信をもったり、感情的に不安定になることが少なくない。え、子供なのでは…?と。いろいろ未成熟なのでは…?と。心配になってくるぜ。

 

そこで読んでみたのが「10代の脳とうまくつきあう」。

10代という時期は、自分とは何かを考えたり、友達や恋人のことが気になったり、誘惑に負けやすかったりする時期です。こういう10代で直面する問題に対処するためにも非認知能力は役立ちます。つまり、非認知能力は、10代という現在にも、大人になってからという将来にも、大事な役割を果たすのです。

引用:はじめに

頭の良さ・IQを指す「認知能力」に対して、意志の力・親切心などを指す「非認知能力」について学べる本書。いい年齢になったのに、10代の頃と悩みが変わらないような僕のような人におすすめの本だった。

 

 

というワケで今回は、「10代の脳とうまくつきあう」について、読了後のレビュー・感想をまとめていきます。あ、記事本文では随所にネタバレや本文の引用もあるので、気になる方はここらでブラウザバックしてね。

 

 

 

 

「10代の脳とうまくつきあう」
概要・おすすめポイント

頭の良さだけで人生の幸福度が決まるわけではない。学力以外の能力も重要だ。目標の達成に関わる「実行機能」や、自信に関わる「自己効力感」など、10代で知っておきたい非認知能力を大解説!

 

引用:筑摩書房「10代の脳とうまくつきあう」

 

 

「10代の脳とうまくつきあう」を読んだ感想・レビュー・心に残ったポイントは以下のような感じ。

 

 

認知・非認知能力について

知能検査によって測定できる能力のことを「認知能力」という。IQテストとかがそう。奈良シカマルがIQ200だ(ちなみに、今日の偏差IQでは上限が160くらい)。

 

一方、あまり馴染みがないのが「非認知能力」だ。こちらは意欲や自信、忍耐や自立、自制、共感といった、心の部分の能力を示す。明確に測定できるものでもないので浸透していないっぽい。

 

知能指数(IQ)だけで人の賢さを捉えきることはできないのは間違いなく、一般的な「頭の良さ」ではないけれども、人生の幸福度において重要な役割を果たすのが「非認知能力」だ。

 

本書では大きく分けて、

  • 目標を達成する力
  • 自分に向き合う力
  • 他人と付き合う力

という3つに分けられており、字ヅラから分かる通り、自身の成長や充足感、他人との良好な関係を築く上で超重要な能力だ。

とはいえ、まずは「認知能力」を伸ばした方が良いのでは…?

知能指数というのは遺伝的な要素が強く、努力や教育によって変えることが難しいそうだ。そんな認知能力に比べ、個人的な努力や適切な理解によって改善することができるっぽいのが非認知能力。

 

本書では、分かりやすい知能・認知能力だけに固執するのではなく、実行機能や情動(感情)知性について学び、現実問題に対応することを推奨されており、無精ひげが濃くなってきた29歳としても大変 参考になった。

 

 

成長・固定マインドセット

すぐに物事をぶん投げないために「粘り強さ」が重要だ。

で、この「粘り強さ」に関係するのが、マインドセットだそうだ。

  • 固定マインドセット
    能力や性格が固定されたものであり、変化しないという考え方
  • 成長マインドセット
    知能などの能力や性格が成長・変化するという考え方

目標達成の段階で壁にぶち当たったとき、どのように考えるかは上の2つに分類される。当然、成長マインドセットの方は

まだ自分の努力が成果に結びついてないだけ。継続すれば、いつかはきっと…!

と考えられるけど、固定マインドセットの人は、

才能がない(性格的に適正がない)から、努力しても無駄だろコレ…

と、諦めてしまいがちだそうだ。幼少期に「あなたは賢いね」と能力を褒められる経験が多いと固定マインドセットになりやすく、反対に「よく頑張ったね」と努力の過程を褒めると成長マインドセットになりやすいそうだ。

 

もちろん知能・能力による影響は確実にあるんだけど、それだけではなく実行機能といった非認知能力について理解した上で、大事なのは「心がけ」。自分は頑張れるんだ、努力家なんだと意識することだそうだ。

 

 

大事なのは、現状を把握すること

こうした悩みは非常によくわかります。ただ、悩みに対する解決策だけを知るのではなくて、なぜ自分には集中力がないのか、がまんできないのか、それは自分だけの問題なのかということを知ることがまずとても大事なことです。

引用:第2章 欲求を制御し必要な行動を選ぶ力

個人的にハッとしたのが上の一節。

 

なんの分野でも、まず大事なことは現状を把握すること。現状を把握したうえで、そのような現状にどのように対処するのか、考えていく必要があるだね。

 

 

「10代の脳とうまくつきあう」
印象的だった文章

「10代の脳とうまくつきあう」を読んでみて印象に残った部分、一節を備忘録として抜き出しておく。多くなり過ぎたので数を減らしたが、少しでも気になるフレーズがあれば是非、本編を読んでね。

 

 

幸せって?

ここでの幸せとはなんのことを指すのでしょうか。心理学では、いくつかの側面が、その人の人生の幸福度に関与することを示しています。大人を対象にした様々な調査から指摘されているのは、「良い人間関係を築けているか」ということです。

 

 

グリッド

粘り強さと最も関連が深い心理学概念として、グリッドというものがあります。グリッドは、目標に向けて努力を続ける力であり、その情熱も含む概念です。

引用:第3章 情熱をもって努力できる粘り強さ

 

 

変容性があることへの理解

努力すべき、学習方法を改めるべき、と押し付けるのではなく、努力や学習方法の変化が中学生の能力を成長させ、目標の到達を促す一般的なやり方だと伝えたのです。

引用:第3章 情熱をもって努力できる粘り強さ

先述したように、マインドセットは介入できると考えることで、問題に直面したときに「才能のせいだから…」と諦めて投げ出さず、粘り強さを発揮しやすくなるそうだ。

 

 

推測・理解・共感

他者と同じ経験をしてしまうことを、心理学では共感と呼びます。ここでは、前者の推測とは異なり、自分と他人の区別はありません。頭で考えて推測するのではなく、ほぼ自動的に相手の気持ちになってしまうのです。だからこそしんどくなってしまうのです。

引用:第6章 共感に基づく親切な行動

他人の気持ちが分かり過ぎて辛い、という10代の悩みへのアンサーが上の通り。推測して理解しているのではなく、他者と同じ経験をしてしまっている、という考え方は斬新だった。

 

 

他人に親切ができる理由

一時的に不利益になるにもかかわらず、あなたが友達に親切にするのはなぜか。それは、お互い様であるという点に尽きます。自分が困ったときに、相手が親切にしてくれる、助けてくれるという期待があるからこそ、相手に親切にするわけです。

引用:第6章 共感に基づく親切な行動

親切とは、困ったときはお互い様という、ある種の保険と考えることができるらしい。もちろん、そんな風に打算的に考えなくても、自分が気持ち良いからという理由だけで他人に親切にできる人もいる。

 

しかし、借金を抱えている人が保険を掛けることに消極的なように、精神的に余裕のある人じゃないと親切(向社会的行動)は難しいっぽい。

 

 

募金箱が人目に触れる場所に置いてある理由

事実、私たちは誰かに見られている場合に、見られている場合よりも、親切な行為をしやすいということが知られています。コンビニストアの募金箱も、店員さんから見えるところに置かれてあります。

引用:第6章 共感に基づく親切な行動

 

 

向社会的行動の基本

向社会的行動の基本となる共感については、「愛する人もしくは信頼する人をつくる」「幸福感や自己肯定感、有能感を持つ」「自分に優しくする」などのようなやり方で伸ばせる可能性があります。

引用:第6章 共感に基づく親切な行動

 

 

実行機能について

まず、実行機能が大事だということと、がまんが大事だということは異なります。実行機能は、「目標を達成する」ために必要な能力です。最も大事なのは、皆さんが自分の目標を持ち、その目標を達成しようとすることなのです。がまんをすることもありますが、それは手段にすぎません

引用:第2章 欲求を制御し必要な行動を選ぶ力

 

 

 

 

総括:「10代の脳とうまくつきあう」
読書レビュー

知能とは別の「非認知機能」

について良く学べた本書だった。

 

どんどん複雑化する社会において、充実感をもって幸せに生きていくためには

  • 実行機能・粘り強さ
    自分の目標を達成するために自分をコントロールする力
  • 感情知性
    自分や他人の感情を把握し、行動に活かしたりする力

といった、知能とは別の能力も重要であり、習慣付けや教育、正しい理解によって補強していくことが可能だと知れたのは大きな学びだった。

 

まだまだ研究が進んでいない「非認知機能」であり、なかには怪しげなセミナーが開かれてたりする。そもそも社会性や情動コントロールを「非認知」能力と呼ぶことに対しても個人的にはハテナが残る。

 

 

そこで発達心理学・発達認知神経科学を専門とする森口祐介さんの「10代の脳とつきあう」を読んでみてほしい。難しい専門用語も少ないので、賢い中坊ならスラスラ読めるぞ。

 

 

 

 

 

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